サイト管理方式の比較資料 | 紀伊乃国屋グループ 9サイト

9つの宿の更新を、
誰が・どう回すか

候補は2つ。画面上で自由に編集できる「Studio」と、 決まった入力画面に書き込むだけの「入力画面方式」(新構成)。 どちらも9館のサイトは作れます。違いが出るのは作った後 ── 季節ごとの入れ替えを、9館ぶん、ずっと回し続けるときです。

前提 ── いま、何が大変なのか

対象は以下の9サイト(合計約110ページ)。現在はすべて、更新のたびに制作会社へ依頼する作りです。

紀伊乃国屋 本館13ページ・英語あり
紀伊乃国屋 別亭19ページ・客室10室
お宿ひるた9ページ
ゆうみ17ページ・客室7室
さざね12ページ
amane12ページ
DANQOO16ページ・客室8室
みささ6ページ・一棟貸し
ゆうみ Sauna Cafe6ページ

管理の大変さの正体は、同じ種類の更新が9館ぶん、季節のたびに発生することです。 プランの入れ替え、料理と季節写真の差し替え、お知らせ、料金や期間の変更 ── 1館なら小さな作業でも、9館では毎回9倍になります。 この「9倍」をどう扱うかが、2つの方式の分かれ目です。

つくりの違い ── 9軒の家か、長屋か

Studioは「独立した9軒の家」。入力画面方式は「共通の骨組みを持つ長屋」です。

図1 |「予約ボタンを目立たせたい」「全館のトップに連休の帯を出したい」── こういう修正のたびに効いてくる差です。

よくある5つの場面で比べる

実際の宿の名前で。左がStudio、右が入力画面方式です。

場面 1

ゆうみに秋の会席プランを追加したい

Studio ゆうみのプロジェクトを開き、CMS(記事管理)にプランを追加。「ライター権限」を設定しておけば、担当者はCMSだけ触れるので、デザインを壊す心配は防げます。

判定: できる(権限設定が前提)

入力画面方式 ゆうみ担当者が入力画面でプラン名・料金・期間・写真を入力して保存。数分後に自動反映。そもそもデザインに触れる入口がありません。

判定: できる(仕組み上壊れない)

場面 2

夏が終わったら、9館の写真とプランを秋仕様にしたい

Studio CMS記事(プラン等)は公開予約で日時指定が可能。ただしページに直接置かれた季節写真や文言は、9プロジェクトを1館ずつ開いて手作業で差し替え

判定: 9回作業(CMS部分のみ予約可)

入力画面方式 写真・プラン・お知らせすべてに「表示期間」を付けられるので、春のうちに秋冬まで仕込んでおけば、期日が来たら自動で切り替わる。切り替え日に誰も作業しません。

判定: 仕込み次第で作業ゼロ

場面 3

全館のトップに「年末年始の営業案内」の帯を出したい

Studio プロジェクト間でデザインを共有する仕組みがないため、9プロジェクトそれぞれで同じ帯を作る(またはコピペ)。外すときも9回。

判定: 作業×9

入力画面方式 共通の型に帯を1回追加すると9館に一斉反映。終了日を付ければ自動で消えます。

判定: 作業×1+自動終了

場面 4

みささだけ、冬は雪見風呂押しの構成に変えたい

Studio みささのプロジェクトを開いて、グループの誰でも(権限があれば)画面上で自由に変更できる。ここがStudioの強みです。

判定: 自分たちで完結

入力画面方式 レイアウト変更は制作側への依頼が必要(みささのファイルだけ修正、他館に影響なし)。写真と文言の範囲なら入力画面で完結。

判定: 制作側に依頼

場面 5

担当者が辞めた・代わった

Studio 後任にStudioの編集操作を教える必要あり(CMSのみなら比較的簡単)。デザインまで触るなら習熟が必要。

判定: 引き継ぎは操作教育しだい

入力画面方式 入力画面は決まった欄に書くだけなので引き継ぎは軽い。ただしデザイン変更は制作側(=特定の人)に依存し続ける点が弱み。

判定: 日常は軽いが制作側依存が残る

費用 ── 9館ぶんの実額

2026年7月17日時点の公式料金にもとづく試算。ドメイン(住所)代は両案とも別途年1〜2万円程度/9館。

※ Studioは独自ドメイン+記事管理(CMS)+ライター権限が使える「Personal」プラン年払いで試算。より上位のBusinessは1館 月3,980円〜。
項目Studio入力画面方式
月額(9館) 10,710円Personal 1,190円 × 9館(年払い時) 0円入力画面・公開の仕組みとも無料枠で運用可
年額(9館) 約128,500円10年で約130万円 0円かかるのはドメイン代のみ
初期の作り込み 人手での組み立てが中心1館の型づくり後は複製で短縮可 制作側がまとめて構築みささの試作は公開済み・費用実証済み
デザイン変更費 0円(自分たちで変更) 制作側に依頼依頼の取り決め(保守)が必要

決め手は、ひとつの質問

徹底的に比べた結果、優劣は「使い方」で決まります。以下の質問に答えるだけで結論が出ます。

QUESTION

季節ごとに変えたいのは ──
(a) 写真・プラン・お知らせ・料金ですか?
(b) ページのデザインや構成そのものですか?

(a) 中身を回したい → 入力画面方式 季節替えは仕込みで自動化でき、全館一括の修正は1回で済む。費用ほぼゼロ。 弱み: デザイン変更のたび制作側へ依頼(ここだけ取り決めが必要)
(b) 見た目ごと変えたい → Studio 画面上で自分たちが自由に変えられる唯一の選択肢。 弱み: 全館共通の修正が毎回9回作業・月1万円強の固定費・ページ直置きの季節要素は手作業

補足を2つ。①Studioの「スタッフが触るとデザインが壊れる」不安は、ライター権限(記事管理だけ触れる設定)でかなり防げます。 これは公平に伝えておきたい点です。②それでも構造上変わらないのは、「9館横断の一括修正ができない」こと。 共通の帯・ボタン・導線を直すたびに9回作業が発生する点は、プランを上げても解消しません。

グループの実態(プラン・写真・お知らせが季節で回る/デザインの骨格は各館で固定)が(a)に近いなら入力画面方式、 各館が見た目づくりまで自走したいなら(b)でStudio、という判断になります。

システム構成と「資産」の所在

ここから先は技術詳細。どこに何が置かれ、やめたくなったとき何を持ち出せるか。

図3 | 一体型(密結合)と部品型(疎結合)。10年運用を考えると「出口があるか」は費用と同じくらい効く。

システム面の本質はこの図に尽きます。Studioは編集・CMS・配信が1社に密結合していて快適な代わりに、 サイトの書き出し機能がなく、やめる判断=全損です。入力画面方式は3層が分離していて、 各層が標準的な形式(Gitのコード・JSONのデータ・静的ファイル)なので、どの部品も後から交換できます。 microCMSの無料枠が渋くなったら別のCMSへ、Cloudflareが嫌になったら別のホスティングへ、が現実的に可能です。

ドメイン・旧URL・予約接続

移行の実務で詰まりやすい3点。予約は問題なし、勝負は「旧URLの引き継ぎ」。

図4 | URL引き継ぎの実務。ここを雑にやると9館の検索順位を同時に落とす。

※ DNS切替はどちらも「事前にTTLを下げる→新環境を検証→切替→旧サイトは一定期間残す」の手順。メール(MXレコード)を使っているドメインは移行時に要注意(両案共通)。
項目Studio入力画面方式
独自ドメイン接続 プロジェクト設定でCNAMEを9館ぶん登録。SSL自動有料プラン必須(Mini以上) Pagesプロジェクトに9館ぶん登録。SSL自動CloudflareへDNSごと移すとドメイン管理も一元化・原価に
旧URLの301 1件ずつリダイレクトページ作成(一括不可)約110本を人手で。.html付きパスは要検証 _redirectsファイルで一括スクレイプ台帳から自動生成可能
予約(489ban) 両案とも影響なし ── 全館「外部リンク」なのでボタンのURL設定だけ(9館ぶんのclient ID一覧は取得済み)
予約カレンダー埋め込み・GTM等の計測タグ カスタムコード=上位プラン限定Personalでは不可の機能あり。要プラン確認 制約なし現行サイトのGTM設定をそのまま移設可
英語ページ ページ複製で作る(更新は日英二重管理)awa-ippeで実際に起きている運用 型に英語1ページを組み込み現行/en/は簡易1ページと判明済みなので負荷小

工数の実測と、AIで開発する現実

今回の案件で実際に計測した数字。見積もりではなく実測ベース。

図5 | 実測: Astro側=みささ試作(スクレイプ30分・構築1日・修正の再公開2〜3分)/Studio側=Cowork検証(2026-07-17)。

※ AI委任率=その作業のうちAIに任せて放置できる割合。Cowork検証(misasa-test)とAstro試作(misasa-pilot)の実績にもとづく。
フェーズStudio入力画面方式
初期構築(1館目の型) AI委任率 約4割ドラッグ&ドロップ不可・画像アップ1枚制限・要素選択が不安定(Cowork実測)。型づくりは人間が速い AI委任率 ほぼ10割スクレイプ→実装→公開まで全自動。実証済み
2館目以降の複製 AI委任率 約7割プロジェクト複製後の文言・画像URL・リンク差し替えはCoworkが安定。検収は人間 AI委任率 10割フォルダー複製+台帳流し込み。人間は最終確認のみ
修正1回の所要(例: ロゴ崩れ) Coworkで数十分〜/人間で数分GUI操作のラウンドトリップが遅い 2〜3分で本番反映実測: 修正→ビルド0.6秒→デプロイ→公開
デザイン変更 人間がGUIで自由に(AIは苦手) AIがコードで対応(人間は指示だけ)ただし「制作側に頼む」体制が前提

なぜこの差が出るか。コードはテキストなのでAIの母語ですが、GUIは「画面を見る→クリックする→結果を見る」の遅いループで、 しかもStudioエディタはドラッグ&ドロップ必須の操作が多く、そこがAIには物理的に苦手です(Cowork検証で確認済み)。 つまり「AIに任せて放置したい」なら入力画面方式、「人間がGUIで作りたい」ならStudio、と工数の観点でも同じ結論に収束します。

非エンジニアは、どこまで触れるか

「触れる広さ」はStudio、「触って安全」は入力画面方式。レイヤーごとに見るとこうなります。

※ Studioのライター権限はPersonalプランで3名まで。microCMSの無料枠は1館(1サービス)につき3名まで。
サイトの層Studio入力画面方式
① プラン・お知らせ・客室情報季節ごとに回る「中身」 触れる(ライター権限で安全化可能)CMS化した範囲のみ。設計しだい 触れる(入力画面のみ・壊せない)スマホ可・予約公開/自動失効つき
② 固定ページの文言・写真温泉の紹介文、館の物語など 触れる(ただしデザイン権限が必要)=レイアウトを壊せる状態で触ることになる 触れない(制作側が対応)更新頻度が低い層なので依頼ベースで十分
③ レイアウト・デザイン 触れる(Studioの存在意義) 触れない(制作側=AIが対応)
④ サイト構造・ドメイン・リダイレクト 管理画面から可能(オーナー権限) 制作側が対応

注意点はStudioの②です。ライター権限で守れるのはCMSに載せた中身だけで、 固定ページの文言や季節写真を旅館スタッフに直させるなら、結局デザインまで触れる権限を渡すことになります。 「非エンジニアが広く触れる」は「非エンジニアが壊せる」と表裏一体 ── この矛盾を権限設計でどこまで抑えられるかが、Studio運用の設計ポイントです。